英語の語源こもごも

 馴染み深い英単語の語源を考察してみましょう。眉につばしてお読みください。

autumn の語源

 英語で「秋」は fall とも autumn とも言うが、この autumn という単語は日本語が語源だった!

 autumn という単語ができたのはけっこう新しく、1870年代の終わり頃である。あの Boys, be ambitious. で有名なクラーク博士が札幌農学校にいた頃のことである。
クラーク博士は1876年7月に来日した。そして、授業が始まった9月に学校で務め出すと、農学校の生徒たちがしきりに「おぉ寒ぅ、おぉ寒ぅ」と言っているのを聞いた。
北の国札幌では、9月になると、もう結構寒い。それで、生徒の一人に What’s authum? と尋ねた。
 すると、生徒は「秋ですからね、おぉ寒うですよ、博士」と答えた。
 それでクラーク博士は、国元であるアメリカのマサチューセッツ州の友人に手紙を書き、「日本の北、蝦夷の国では、『秋』のことを authum という」と書いたのであった。
 マサチューセッツ州の友人たちはそれをおもしろがり、authum ではなく autumnというつづりで広めていったらしい。

 アメリカでも、多くの州では「秋」に fall が使われるが、マサチューセッツ州を中心とした東北部で autumn が好んで使われるのは、こうした由来からである。  

pupil の語源

 この単語を作ったのも、あの有名な札幌農学校のクラーク博士。
 クラーク博士が日本に来た1870年代までは、児童を表す英語の表現は primary school student あるいは elementary school student しかなかった。
 博士が農学校で教えていた時代、外国人の姿や授業風景が珍しいからと、いろいろな学校の児童や生徒が見学にやって来た。しかし、小学校低学年の児童たちは走り回って言うことも聞かずうるさい。
 手を焼いた博士が、付き人に「何ですか、あの子たちは?」と訊くと、付き人は「ガキですよ。まだヒヨコです。ピヨピヨ、ピヨピヨです」と答えた。

 「ピヨピヨ」という響きが気に入った博士は、早速、国の友人たちに「日本の小学生の児童たちはピヨピヨだ」という手紙を書いた。ただ piyopiyo では単なるオノマトペ(onomatopoeia)になってつまらないので、発音が似ている pupil というつづりを思いついて書いたというわけである。

journey の語源

 2020年のコロナ禍で、「GO TO トラベル」という言葉ができた。しかし、英語に go to travel という表現はない。go traveling とか go on a trip のように言う。
 「旅行」を表す英単語には trip や travel のほかに、tour や journey もある。このうち journeyはけっこう長い旅行を指し、特に「船旅」などに使われることが多い。

 そして、なんと! この journey は日本語が語源だったのだ!

 journey という英単語を思いついて使い始めたのは、ヘボン式ローマ字を作って広めことや明治学院大学の創始者として知られるジェームス・カーティス・ヘボン(James Curtis Hepburn)である。
 横浜にいた頃、横浜港で、アメリカから来る友人を出迎えたり帰国する人や船旅に出る人を見送ったりした。そして、港で人を見送るとき、日本人の多くが「じゃあねぇ。またねぇ」と言うのを何度も聞いた。

じゃあねぇ」という響きに魅了されたヘボン氏は、この言葉の発音に似た単語を「船旅」という意味で作って使おうと考えた。自分で考案したヘボン式ローマ字janeと綴ってみたが、これは人の名前と誤解されそうでおもしろくない。そこで、今度は英語らしく journey としてみた。

 これがまわりの人たちに殊の外好評で、多くの人が手紙の中で使い、アメリカ本国で一般的になっていったという。

やっぱりお断り。この3つの話はデタラメです。

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