Voice of America のこと
Voice of America(VOA)という、アメリカのワシントン DC から全世界に向けて放送されている大統領直轄の国営放送があります。
以前はラジオの短波放送で、日本でも熱心な VOA 聴取者たちは、高額で性能の高い短波ラジオを買ってまでして聴いたものです。つまり、そうしてまでも聴きたいほど価値のある放送だったのです。
今ではインターネットで聞くことができます。インターネットですから、クリアな音声です。VOA はアメリカの国営放送ですから、その英語の内容と質は厳密に吟味され、選定された最高のものです。
VOA 放送には、非ネイティブ・スピーカーのための VOA Learning English という、語彙レベルとスピードを抑えたやさしい英語のプログラムがあります。
英文を読むスピードはネイティブ・スピーカーたちが話すスピードの3分の2の、1分間に約 100 語程度です。語彙のレベルは約 1,500 語となっています。この語彙レベルとスピードは、英語の初期レベルの学習者にとっては非常にありがたい学習素材でしょう。
The New Horizon Ladder Dictionary of the English Language という辞書
米国情報庁(United States Information Agency)が支援し、非英語圏の人たちに英語を伝えるにはどういう単語を使うのが最も効果的かを調査し、12年という長い歳月をかけて編纂された辞書があります。それが “The New Horizon Ladder Dictionary of the English Language”です。
VOA Leaning English の正しい理解のために選び抜かれた 1,541 語
この辞書には、約 6,000 語の見出し語があります。この見出し語の中から、VOA が VOA Learning English の正確な理解と聞き取りのために、特に選りすぐった単語が、本書に掲載されている 1,541 語です。
現在、このワードリストは VOA Leaning English の下記アドレスにて PDF ファイルとして公開されています。
https://docs.voanews.eu/en-US-LEARN/2014/02/15/7f8de955-596b-437c-ba40-a68ed754c348.pdf
(PDFが開きます)
VOA Learning English と『VOA 基本英単語1541』
このワードリストには英単語と英語の語義しかありませんが、このたび、私どもでは『VOA Learning English VOA 基本単語1541』という本を出版しました。
この本では日本語の語義と、例文、さらに単語と例文の音声を加えました。
本書の構成と特長
本書は、この 1,541 語を A から Z の順に並べています。
見開き(左右両ページ)で1セットとして学習を進めるようになっています。紙面のサンプルをご覧ください。下の写真は、左右見開きページです。
左ページに見出し語、英語の語義、そして例文が掲載されています。右ページには、日本語の語義、派生語、類義語、反意語、関連語(句)など、そして、例文の日本語訳が示されています。
各単語と例文に分けられた音声が全1541語分用意されています。
下の音声は紙面サンプルのいちばん上にある court の音声です。
本書を使った効果的な単語の覚え方
語彙力は単に単語を暗記するだけではなかなか身につくものではありません。本来の英単語学習には理論的な覚え方があるのです。この本はそうした覚え方を意識して作成されています。
英単語の辞書的意味と文脈での意味
単語には lexical meaning(辞書的な意味)と contextual meaning(文脈上での意味)があります。初期の英語学習者は、初めに辞書的な意味で単語を覚えます。多くの人が1つの単語に1つの語義で覚えようとします。これでは、英文の中で知っている単語に出会ったときに、知っている意味だけで文の意味を理解しようとしてしまいがちです。「単語がこういう意味だから、文はこんな意味になる」と思ってしまうのです。
ですが、実はこれは逆で、「この文はこういう意味になるから、この単語はこの意味だ」と考えることが大切なのです。これが文脈的意味です。こうした読み方は「英単語=日本語の意味」の1対1で英単語を覚えるのではなく、もっと広い意味で単語のイメージを理解し、そのイメージをそれぞれの文に当てはめていくことが大事です。英単語の文脈的意味を数多く知っていると、大きく文をとらえ、その中での単語の意味と役割をすばやくつかむことができるようになります。
このように英単語を効率的に、かつ使える形で覚えていくことが重要なのです。こうした文脈的意味で英単語を覚えていくためには、その単語が使われた英文と音声に数多く当たる必要があります。
それでは、以下に本書を使って英単語を効果的に覚えていく方法を説明いたします。
1 まずは英語の語義で、単語のイメージをつかむ
この単語集は単語のすぐ隣に英語の語義が掲載されています。まずはこの語義を読んで、その単語の持つニュアンスをイメージしましょう。これにより英語のネイティブ・スピーカーたちがその英単語についてどのように考えているのかが理解でき、英語ならではの単語と語義の結びつきを理解することができます。
2 日本語の語義をきちんと理解する。
次の語義は courtを説明したものです。
where trials take place / where judges make decisions about law
court を「テニスコート」などの「コート」として「court =コート」と1対1で覚えていた人は、上の語義を見て驚くかもしれません。この文は簡単な単語で書かれていますが、court が「裁判」という法律に関する意味を持つという知識がなければ、上の説明を読んでもピンと来ないでしょう。このように英単語を英語の語義で理解しようというのは、英語初心者にはなかなかむずかしいことです。
こうしたむずかしさを解消するために、日本語の語義も掲載しました。court は「裁判」だと分かれば、この英語の語義にも納得がいき、そのイメージをうまくつかむことができます。このように、英語の語義だけで単語を理解するのではなく、日本語の意味もセットで理解することがとても重要です。
3 単語の使われ方を例文で学ぶ
英単語とその語義説明、そして日本語の語義だけを知っても、その単語を深く理解したとは言えません。その状態では、まだ「あいまい」に理解したままです。
この、あいまいな理解をしっかりとした理解に深めていくためには、前に述べた contextual meaning(文脈的意味)も理解して覚えていくことが大切なのです。
I’m not happy with the court’s decision.
「その裁判の判決を、私は不満に思います」
英単語と語義だけではあいまいな理解も、例文を読むことでその使われ方が分かり、もっと「しっかり理解」できるようになります。
こうした
「英単語 → 英語の語義 → 日本語の語義 → 実際の例文での使われ方」
という流れで英単語を覚えることが、シンプルですが最も大切で、かつ効率のよい覚え方です。
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