突然ですが、年収が1千万の人の時給は、1万円です。
「えっ? 労働時間は 1,800 時間くらいだから、10,000,000÷1,800=5,555 で、5千円くらいじゃないの?」
と思われるでしょう。ですが、それは給料をもらう側の観点です。雇用者側から見ると、社会保険や退職金積み立て、社内の諸経費(事務所の家賃や光熱費などなど)を含めると、時給は1万円くらいになるのです。
また、急に話が飛びますが、20数年前に、ETS(TOEIC を開発・実施しているところ) が、TOEIC の下に位置するようなテストの開発を始めたことがあります。TOEPA(Test of English for Proficiency Advancement)という名前になるはずでした。
このテストの開発は一度中断し、次に私が知ったときは TOEIC® Bridgeという名前になっており、現在実施されているテストになりました。
この開発の過程で、TOEICを考案した三枝幸夫教授と私とで、内容の検討や指示文の日本語訳、その他、下の手紙にあるような camera ready (版下のこと)などを制作していたことがあります。
上の手紙を読むと感じると思いますが、とても非英語話者の私が書いたとは思えない高度な英語ですね。
私のサインがありますが、私が書いたものではありません(ETS の担当者の宛先は意図的に消しました)。私のオフィスに当時いたスタッフ(現在インディアナ州在住)が書いたものです。
20数年前にはまだメールは一般的ではなく、ファックスでのやりとりでした。朝オフィスに来ると、ETS からファックスが届いています。
私が読んで、または上記のスタッフにもいっしょに読んでもらい、私が「こんなことを書いてほしい」と彼に口頭で伝えます。
すると、ものの10分で、上のような手紙ができてきます。そして、私が読み、意図するところがしっかりと書かれてあれば、それにサインをしてファックスします。
後日談ですが、のちに ETSの人が日本に来て TOEIC関係の人たちと会っているとき、「Akaida というとてつもなくすばらしい英語を書く人がいるはずだが、会いたい」と言われて呼び出され、、会いに行ったことがあります。
もちろん「あの英語は私が書いたものではありません」と、いきさつを説明しましたけど。
さて、年収1千万の人の話に戻しましょう。この年収1千万の人が、そんなに英語を書くのが達者ではなかった場合、上の手紙くらいの長さの英文を書くのにどのくらいの時間がかかるでしょうか。
場合によっては1時間くらいかかるかもしれません。むずかしい案件だと2時間くらいかかることもあるでしょう。しかし、教育をしっかり受けたネイティブ・スピーカーであれば、ものの10分もかかりません。
日本人が英語のメールや手紙を書くのに取り組んでいる時間は、当然、ほかの業務をしていないわけですから、英文を書くのにダブルの時間を消費していることになります。
「日本経済が沈没する」と書いたのは、このことです。メールを書くのに2時間かかったとしたら、ダブルの時間の消費で、メール1通のために4万円を使ったことになるわけです。
ネイティブ・スピーカーに書いてもらえば、10分で済み、且つ、自分は自分の業務ができるわけです。
もちろん、書かれた英文を読んで正確に理解し、ネイティブ・スピーカーに書くべき内容を正確に伝えられるリーディング力、リスニング力、そしてスピーキング力は必要です。
ただ、ライティング力を伸ばす苦労や時間を考えたら、書くことはネイティブ・スピーカーに任せるシステムは合理的だと思います。
20人から30人くらいのグループに1人のネイティブ・スピーカーを、メールや手紙を書くことを専門に雇用すれば、日本人が英文を書くために多くの時間を費やすことなく、本来の業務を遂行していけます。
もちろん、そのネイティブ・スピーカーは企業秘密を守れる人物でなければなりませんし、そうした雇用契約をしっかりと結んでおく必要はあります。
この記事は極端な例です。
ただ、日本人が英語を書く、または書けるようになるために勉強したり研修を受けたりというのには、膨大な時間が必要だということを述べたかったのです。
その膨大な時間をライティングのトレーニング以外の学習に使えば、もっと有効的な英語学習ができるだろうと考えたのでした。
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