今ではほとんど目立たなくなったが、私の右目の下には数センチの傷跡がある。小学校に上がる前か上がってからかよく覚えていないが、家の庭の木の根につまずいて転び、前にあった尖った石で目の下を切ったのである。
今では野鳥を捕まえて飼ったり食ったりすることは禁止されているが、私が子どもの頃は、メジロを捕まえて飼ったり、鳥罠をかけて捕った野鳥を食うのはふつうだった。
これは、私が子どものころの屋久島での話。
私が子どもの頃にかけた罠は「くびち」と呼ばれるようだ。兄に手伝ってもらって、初めて「くびち」を作り、かかった獲物を母親に見せようと喜び勇んで家に駆け戻っていて、木の根につまずいたのである。
くびちの作り方
さて、その「くびち」という鳥罠の作り方を紹介しよう。ただし、作り方を知ったとしても、おそらく役には立たない。「鳥獣保護法」によって「日本に生息する鳥獣は鳥獣保護法で守られており、基本的には無断で捕獲することができません」ということになっている。悪しからず。
まず、下の2つを用意する。これは山(家の近くの藪)に入る前に、家で作って用意する。
輪っかになったのは、長さ3メートルくらいの丈夫な糸(畳糸など)を使う。右の1本の糸はその半分よりちょっと長いくらい。
上の2つが用意できたら、小さい鉈(なた)やナイフを持って藪に入り、根元の直径が3センチ前後の木を探す。太すぎると、バネが強くなりすぎて糸が切れやすい。
手頃な木を見つけたら、下のイラストのように150センチ~2メートルあたりで、上を切り落とす。枝も落とす。
そして、枝や先っぽを切り落とした木に、最初に用意した2つをくくりつける。
そして、一気に出来上がり図になってしまうが、下のイラストのように、地面には、直径が同じく3~5センチの棒を横に渡し、両端に重しの石を置いて、はね上がらないようにする。または、片方を地面に突き刺して跳ね上がらないようにし、片方だけに重しの石を置く。
地面から2~3センチのところに来るように、跳ね押さえの細い横棒を留める。これには、小さいへごの茎を使うとよい。
小鳥が中のエサをついばむために頭を上下すると、この細い横棒が落ちる。そして、まん中の支えが跳ね上がって、木のバネの力で太い横棒が落ち、鳥の首が挟まるという仕掛けである。
正面から見ると、こんな感じである。
横から見ると、こんな感じ。哀しげな鳥だな、このイラストは。
毎日、学校から帰ると、かばんを置いて一目散に見に行く。しかし、獲物が手に入るのは、よくて10日に1羽くらいのものだった。
もちろん、獲れた鳥は焼いて食った。罠から取り上げたときにまだ鳥が温かいと、ちょっと微妙な気持ちにはなったが、食い気のほうが強かった。
下の本はけっこう売れています。
コメント
はじめまして。
この鳥罠の事を、屋久島では「くびち」と言うのですね。
私の住んでいる福島県浜通りでは、ほぼ同じものの事を「ごんぼじ」と呼んでいます。私は今50歳なのですが、私より一回り上の世代は、この「ごんぼじ」で鳥などを捕まえていたそうです。
ところで私は、福島県南相馬市で、地域の情報を発信するニュースレターを書いているのですが、実は今「ごんぼじ」の事を記事にしようとしています。
そこで、こちらで使われている「くびち」のイラストを、是非使わせて頂きたいのです。
ニュースレターは、紙媒体で地域に無料配布したり、Webで不特定多数の人にご覧頂いたりしているものです。
商用ではありません。
とても分かりやすく、綺麗に書かれているので、ご検討下されば幸いです。
突然ぶしつけなお願いで申し訳ございません。
宜しくお願い申し上げます。
コメントをありがとうございます。
「くびち」というのは、ネットで見つけた呼び方です。私たちは屋久島では単に「わな」と言っていました。
イラストをお使いになるのは大丈夫です。
ただ、リンク(URL)や私の名前を書いてください。私のブログへのアクセスが増えるのはうれしいことなので。
よろしくお願いします。
赤井田拓弥
有難うございます!
では、こちらのブログのトップページのURLを添付の上、使わせて頂きます。
この仕組みの罠は、各地で色々な呼ばれ方で呼ばれているようですね。面白いものです。
はい、よろしくお願いします。
屋久島栗生でも、「はじきわな」といって、学校帰りに、見回りに行き、獲物をポケットに入れて持ち帰った。今では焼き鳥で食べる事は出来ないが、子供の頃は大事な食料(たまに食べる)でしたね。
私たちは、ただ「鳥わな」と言っていました。冬のあいだ、それなりに捕れました。数羽くらい。
焼いて食いました。
私は神奈川県相模市緑区在住の82歳の権守と申しますが、最近くびちを作成しました。
詳細は今後対応したいと考えています。
当地方の呼び名ですが、私はべロリンと記憶しておりましたが、相模原市と合併以前の旧城山町の町史の民俗編の
方言(地域で使用されてきた言葉)の欄にはベロリと記載されておりますので、ペロリが正しいようです。
2021年11月22日
権守さん、コメントありがとうございます。
日本中でいろいろと呼び方が違うようで、おもしろいと思っています。私は単に「鳥のわな」と呼んでいました。
これ、いいなぁ。やってみたい。
けど、これって鳥獣保護法で違法行為なんですよね……。
コメントをありがとうございます。
そうなんですよ。違法行為なんです。私が子どもの頃も、すでにその法律があって違法行為だったのでしょうけど、そんな意識はまったくなくて作って鳥を捕って食べていましたね。
なんで駄目かというと、「とっちゃいけない鳥も獲ってしまう、かつ、鳥って罠にかかると死にやすい」からなんすよね。多分。
狩猟法ってのが元なので、法施行の時期はたしかに古いけど、こういう伝統的な鳥の罠も駄目ってのは、いつからだめになったかは……ごめんなさい、調べなきゃわかんないです。かすみ網なんかはだいぶ早くから違法とされてましたが、みんな守ってなかったですよね。いまだに逮捕者出てるし。
こういう知識って、使っちゃ駄目だとしてもいざという時、結構役立ちますね。
山で遭難したら法律がどうとか言ってる場合じゃないですもんね。
私もかすみ網を使ってメジロを捕ったこともあります。そして、メジロを飼っていました。
今でもかすみ網ってあるのですか。
わな(ヒグマ及びツキノワグマにあっては、おし、はこわな及びくくりわなに限り、
その他の獣類にあっては、おしに限る。)を使用する方法。
は、違法です。
はじめまして
白い雪に覆われた庭で餌を探す野鳥たちを見ていて、幼い頃、冬になると父親に連れられて里山に罠を仕掛けに行ったことを思い出しました。罠の名前がなかなか思い出せなくて、確か「こぼつ」とか「こぼち」と父は呼んでいたはず。ネットで「くびち」と知り、こちらの記事に巡り会いました。よく似た作り方で、60年近く前の記憶が蘇りました。
物心ついてから小学生の頃、わたしの田舎では、牛耕から耕運機に、鎌刈から草刈り機にと農業が機械化されていって、雀や雉などの野鳥や野うさぎなどを捕らえて食べる習慣もあの頃までだったものです。トリモチでめじろを捕らえて飼ったり、瓦屋根の雀の巣を探してヘビより先に卵を取って食べたり、今のオール電化キッチンの暮らしからは想像もつかないあの頃が妙に懐かしく思い出されて、ついコメントをしたためてしまいましたm(_ _)m