赤井田拓弥がカリフォルニア州 Palm Desert にある College of the Desert に留学していたときに起きた、さまざまな出来事をエッセイ風に書いています。
ちょっと話がずれるが、アメリカでの食べ物にまつわる話を少し書いてみよう。
No Fried Cabbage のこと
子供のころから、私はキャベツを炒めてマヨネーズをつけて食うのが大好きだった。屋久島では母に頼んでよく作ってもらった。
大学時代は新聞販売店で食事が出たので、自分で作って食べるようなことはなかったが、アメリカに来る前に東京で3か月ほど住んだとき、ときどき、自分で作って食べた。
Indioのアパートに住み始めてすぐの頃、アメリカに2年以上住んでいる先輩が次のようなことを言った。
「アパートによっては No Fried Cabbageって掲示を出しているところもあるよ。これはね、黒人がキャベツの炒め物が好きで、こういった掲示を出して、暗に黒人の居住を拒んでいるわけだ」
私が住んだアパートにはこんな掲示はなかったし、その後、いくつかのアパートに行ったりしたこともあるが、ついぞ見たことはなかった。先輩が言ったことは本当だったのだろうか。それとも、自分でふっと思いついたことを言っただけだったのだろうか。
私がキャベツを炒めて食うことは、結局、アメリカ滞在中にはなかった。
ゆで卵の時間
砂漠の町に住み始めて2か月くらいが経った頃、日本人学生4人でサンディエゴに行った。砂漠に住んでいると、無性に海が見たくなるのである。
大きめの車を買った友人の車で出かけた。
サンディエゴでお昼を食べようとファミリーレストランに入った。
アメリカのレストランでは、ご存じのように、細かく注文を聞いてくる。「卵はどのようにしますか」とか、「ドレッシングは野菜にかけてお持ちしますか、それとも別のボウルに入れて?」などなど。
友人の1人がゆで卵を注文した。すると、How many minutes? とたずねられた。日本のレストランでゆで卵のゆで時間を訊かれることなどないから、びっくりした。
慌てた友人は、とっさに Three minutes. と答えた。ウルトラマンじゃないよ。
ウエイトレスは、一瞬怪訝な表情を見せたが、そこはプロ。何も質問し返さないで去った。
そして、出てきたゆで卵は、ほぼ生卵だった。
ゆで卵は、かなりの半熟でも7分は必要である。固ゆでの場合は10分以上が必要だ。