赤井田拓弥がカリフォルニア州 Palm Desert にある College of the Desert に留学していたときに起きた、さまざまな出来事をエッセイ風に書いています。
こうして、ハワイを出てロサンゼルス空港に着いたのは、夕方に近い時刻だった。ハワイで入国審査が終わっているので、空港を出るのは早かった。
空港を出ると、ほかの日本人乗客たちはそれぞれ迎えの人たちがいたり、再会を喜ぶ人たちがいたりだったが、私には出迎えてくれる人は誰もいない。
まだ公衆電話の使い方も分からない。ホテルも予約していないので、それから泊まるホテルを探さなければならない。ホテルの送迎バスなどがあったが、ホテルに行く方法も知らなくて不安だった。
結局、空港前のタクシーをつかまえ、「いちばん近いホテルまで」と言って連れて行ってもらった。
タクシーにはけっこう長く乗っていたように思う。
砂漠の町に住み始めて慣れてくると、ロサンゼルスに車で行く用事があったときなどに空港まで足を延ばしてみることもあった。そして私が泊まったホテルを見ると、実は、空港の出口からは歩いて行ける距離だった。
一方通行で、遠回りするしかなかったのかもしれないが。
ホテルで。
I don’t have a reservation, but do you have a room tonight?
さすがに、この程度の英語は覚えていったので、ホテルのフロントでこれは言えた。部屋はあった。そして、確か40ドルくらいだったと覚えている。その料金が高いのかどうかの基準も分からず、泊まった。
さっそく時差ボケを体験した。部屋に入ると、夕方はまだ早い時間だったが、飛行機での旅の疲れからすぐに寝入ってしまった。そして、夜中に目が覚めた。日本の夕方である。
それからは寝付けずに、朝まで悶々としていた。
遠いところまで来たなあ、この国には知る人は誰もいないのだなあという思いがわいてきた。ハワイで別室に入れられて尋問を受けたことに対するショックが、またよみがえってきた。
ホテルの窓の下からは、パトカーのサイレンがひっきりなしに聞こえてきた。カーテンを開け、眼下を行き交うパトカーの警告灯を見ていると、不安がこみ上げてきた。
「明日の飛行機で、このまま日本に帰ってしまおうか」などとも思ってしまったりもしたのだった。
こうして、アメリカへの第1日目が終わった。